Chapter 5


きけんな国?《Part.4》

普通の人々




今のApartamento に引っ越してきて最初にしなければならなかったことのひとつにガスの注文がありました。
リマには都市ガスがなく、プロパンガスのボンベを近くのガス屋に注文して配達してもらわなければなりません。
若い配達員がボンベを持ってきて、キッチンの管に接続してくれます。
代金を払うのにポケットにお金を持っていなかったので、財布の置いてある部屋に戻ってお札を取りキッチンで待っていた若者に渡しました。
“Gracias”(ありがとう)
“Gracias” (ありがとうございました)
とお互いに言い若者は帰っていきました。
日本ならごく当たり前のやりとりでしょう。
ところが、この話をしたときシニョーラ坂口に注意されました。
金額をあらかじめ聞いておき、その場で渡すように〜。
もし、お金を取りに別の部屋に行くときは、配達員には外に出てもらった上で取りに行きお金はに出て渡すように〜 と。
意味がわからず、返答のしように困っている私にシニョーラは説明してくれました。
お金を取りに行っているスキにそのへんにある金目のものをポケットに入れてもっていってしまうケースがあるから・・・。
(私)「そんなことをしたら誰が盗っていったかわかってしまうじゃないですか。」
(シニョーラ)「それでも盗っていくんです。」
さらに「だから配達員を外に出て待たせても全然気にしないから大丈夫。」と。
この国では人を信用しない、というのが当たり前になっているようです。
このことはいつかまた別の機会にもお伝えすることになりそうですが、普通の日本人としてはちょっとツライところです。

 これまで、キケンな国のキケンな人々について書いてきましたが、どんな国でもキケンな人とそうでない人がいっしょに生活しているのは同じです。
当たり前のことですが、ペルーの普通の人々がキケンだなどということはぜったいありません。
このApartamento の入り口に交代で24時間警備をしている何人かのペルー人の中にも、気のいい親切なオジサン(背は高くないががっしりして、見たところはちょっとこわい感じ。年はひょっとしてまだ35才ぐらいかもしれない)がいて、私が日本人と知って、通るたびに「コニチワ」(「コンニチワ」でなく)とか「オハヨオ」とか声をかけてくれます。
ここのゴミ処理は、朝出入り口に大きなドラム缶が8つほど置かれ住人はそこにゴミを捨てます。
10時すぎになると市の大型トラックが来てそれを集めて行きます。
少し前の日本と同じようにスーパーのビニール袋に入れて捨てるのがほとんどです。
初めてビンを捨てることになった日、いっしょに捨てられるかどうかわからず、べつの袋にまとめて持って行き例の警備員に尋ねました。
わたしのカステジャーノ(ここではスペイン語のことを普通“Espanol”でなく“Castellano”と言っているのを知りました。)のレベルではよくわかりませんでしたが、とにかくいっしょに捨ててもかまわないということだけはわかりそのまま捨てました。
翌日朝出かけるとき、その警備員が私を見つけやってきて「ここはどんなものでもいっしょに捨てていい。 別にまとめることも要らない。」と身振りや手振りでもう一度一生懸命説明してくれます。
わたしが「ありがとう」というと
“Si”“Si” とニコニコして手を振ります。現在、リマとその周辺にある日本語教育機関(学校と日本語塾)のリーダーによびかけ、ペルー版の授業マニュアルを作る作業を始めています。
その基礎資料として各機関をまわり、授業の実態を調べています。
そのためタクシーでかなり遠方まででかけるのですが、目指す場所がなかなかわからず、運転手も私たちもよく困ります。
やむを得ず街角のガソリンスタンドで尋ねると店員も知らない。
私たちのやりとりを見ていたまわりの客や店員が寄って来て、口々にあっちじゃないか、こっちだろう、みたいに話した挙句に一人が「ちょっと待て。いま携帯で知っているやつに聞いてみるから」のような事を言い、自分のくるままで行って調べてくれたりします。
 別の街では、物を売っているオジサン(この国は物売りがやたら多いです。交差点の信号で車を止めると何人も寄って来てガム・アメ・新聞・雑誌・ビスケット〜さまざまなものを売りにきます。)に尋ねると、売る手を止めて一生懸命教えてくれます。体格がごつくて私は内心「こんなこわそうなオジサンに尋ねなくてもいいのに」と思ったくらいのその人が最後に言った言葉の断片は“Si equivoco … Disculpe ”(もし間違ってたらゴメン)でした。

 自分勝手、スリやドロボーが多い、時間にルーズ・・・・。
ペルーに限らず中南米の国の評判はあまり芳しくないし、事実その通りのところもあります。
が、個々には人なつこく親切な人々がたくさんいます。
そして感じた事をすなおに表現する点ではわれわれ日本人より優れているかもしれません。こちらに来るとき乗った“Lanchili” (だったと思いますがつづりは間違っているかもしれません)航空機がリマ空港に着陸するとき、車輪が地面についた瞬間機内から一斉に拍手が沸き起こりみんなで「よかったよかった」と喜び合っていたのを思い出します。



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