Extra 2


夏のクリスマス

12月。夏に入りました。
リマの気候は同じ季節の中でも日によってずいぶん変わります。
曇った日には2〜3ヶ月前に戻って肌寒かったりしますが、晴れた日の日中は歩いているだけで汗が出ます。 
街に若い女性の「へそ出しルック」(すみません日本ではもう「死語」でしょうか)や「肩出しルック」も増えてきました。
最高気温は晴れた日で25度くらいでしょうか。
意外と低いですが日当たりで実感する温度はずっと高いような気がします。

スーパー・ウォンの2階は食器・簡単な家具・書籍文房具・玩具などの売り場になっています。 しばらく遠ざかっていたのですが12月の初めに久しぶりに2階に上がってびっくりしました。
売り場全体に赤と緑があふれています。
玩具が大きく面積を占め、プレゼント用に飾り付けられています。
他の商品もそれに連れて赤・緑中心の飾り付けになります。
それから数日後、こんどは1階の食品売り場も含めて、レジのセニョリータの帽子が一斉にサンタの帽子に変わりました。

<汗だくのサンタクロース>
通りに面した店全体のレイアウトもすでに12月初めからツリーの緑、サンタの赤、それに雪をイメージした白が中心です。
セニョリータのサンタの帽子と前後して本物のサンタも登場します。
これは超大柄の男性の仕事のようで、帽子とヒゲで顔はほとんど見えませんが、子供たちには人気で、子供に声をかけたり頭をなでたりしていますが、ときには子供のほうからかけよっていってサンタと話しています。
店内のいろいろな売り場をまわっていますが、ときには入り口の外でPRしたり、駐車場まで愛嬌をふりまきにいったりしています。
外からはわかりませんが、重い衣装や長靴で汗だくなのだそうです。
Tシャツでもウォンまで歩いて汗になり、入り口で子供にサービスしているサンタさんをみると「大変だな」と思います。

<パネトーン>
サンタに続いてPaneton(パネトーン)が現れます。
これはクリスマスの夜みんなで食べるもので、コックの帽子のような形をしたものが本来とも聞きましたが、実際は上は丸いですが筒型で、コックの帽子のように下が細くなっているものは少ないようです。
パンとケーキの中間のようなもので少し粗い目のパン生地にレーズンやゼリー状の果物などが入っていて甘いです。
大きさは1キロですが、こちらの人はたくさん食べるので家族でなら一度でなくなるでしょう。
クリスマスまでまだ3週間近くある時期から売り出して大丈夫なのかと心配しましたが、1〜2ヶ月くらい大丈夫とのことです。

<かご入りお歳暮カナスタ>
Paneton のあとはCanasta (カナスタ)です。
Canasta は辞書をひいても「やなぎかご」とだけしか載っていませんが、要するに日本でいう「お歳暮」にあたるものです。
たしかに下のほうは「かご」になっていて、その中にウィスキーなどのアルコール類、コーヒー・紅茶などの飲み物、それにそれぞれのつまみとなるクッキーなどがセットで盛られている、といったものです。
値段は実に幅広く安いものだと30ドル前後、高いものは499ドルというのもあります。
中を見ると、高いものはウィスキーの高級ブランドがずらりと並び、安いものはそれなりに、とそれぞれ“ reasonable “ な構成になっています。
「500ドルもする贈り物をする人ってどんな人ですか?」と聞くと「やはり会社関係でしょうね。それと個人の場合だと特にお世話になった医師とか弁護士とか。」という返事が返ってきました。
このあたりは日本ともあまり変わらないようです。

高いものは当然大きくて1メートル30〜40センチもあります。
聞くところでは、こちらの習慣としてもらった贈り物を家の外から見えるように並べて飾るそうです。(クリスマスカードも窓に張り出すそうですが。)
こんな大きな物をいくつももらった家はどうやって飾るのでしょう。

<一等景品トヨタをめざせ>
パネトーン、セニョリータの帽子、サンタの登場、そして入り口では大小さまざまなCanastaが客を出迎え、クリスマスムードが高まってきますが、それに拍車をかけるのが「大売出し」です。
今年のウォン・メトログループの売り出しの一等賞品はトヨタの新車です。
ウォンの入り口にそのピカピカの新車が置かれ“ これはあなたのものかもしれない”などと「けしかけて」います。
以前、サンタ・イサベルの一等は“ Apartamento ”だったそうです。
これはマンションを建てた業者がサンタ・イサベルと提携し、Apartamento 一戸を提供し物件のPRにしたもので、イサベル側は負担なし、業者側も宣伝効果を考えれば十分ペイする〜との計算だったようです。
先日ウォンで買い物をしていると突然ベルが鳴り続いて拍手が聞こえてきました。
いったい何だろうと行って見ると抽選に当たったことを知らせるベルとそれを祝福する周りの客の拍手だったのです。
注目の中、当たった中年のおじさんがさすがに少し恥ずかしげに、しかし嬉しそうにサービスカウンターの方へ向かって行きました。
もちろんトヨタの車ではないでしょうが、それなりの賞品みたいでした。
「好奇心」の岡田としてはサービスカウンターでの手続きを終えて帰って行く、人のよさそうなそのおじさんによほど“ Que gane ?”(何があたったんですか?)と聞きたいところでしたが、この時期“日本人” がペルー人のプライバシーに立ち入りコトが大きくなったらヤバイとぐっとがまんしました。

<人懐っこさが持ち味>
たぶん、そのおじさんなら“ Gano 〜〜 ”と教えてくれたと思うのですが。
というのは、ペルー人の人懐っこさにこのところ幾度か遭遇したからです。
先日トウモロコシを買おうと野菜売り場へ行きました。
ちょうど中年のシニョーラがひとつずつ皮をはいで中をチェックしていたので、やわらかいのがいいのかと尋ねて見ました。“ Si .como este “(そう、こんなふう
に)といい、説明しながら私の分も選んでくれ ”Mas ? “ (もっと?)と次のを選ぼう
とします。あわてて“ No. no mas . gracias ” (もういいです)。
笑いながら彼女“ Si.“といった調子です。

<幻のさかなLoro>
その前には魚売り場で例によって Chita (鯛)を買っていると、イタリア系と思われる父娘が“さしみが好きか”と聞くので“そう”と答えると“さしみならこれがいい”と教えてくれたのが“ Loro”という魚でした。
青みがかったちょっと熱帯魚のような感じの大き目の魚で値段もキロ4〜5ソーレスと大変安いです。
半信半疑で聞いていると二人が口を揃えて“本当においしいから買って見ろ”と勧めます。
“きょうはもうChita を買ったから”というと“じゃあ、次に買え。ただ、この魚はあまり売り場に出ない”と。
二人によると Loro は普通の漁ではなくスキューバダイビングでとるのでいつもはない、というのです。
たしかに言われて見るとヒレのあたりにモリで刺したあとがあります。
サシミには目のない私としては次に見つけたらゼッタイ買おうと魚売り場をのぞくの
ですがその後ついに Loro に出会えずにいます。
他にも買い物の時には人に教えてもらうこともあって、いままでそういうケースでペルー人に“不親切”を感じたことはありません。
ちょっと話がそれましたが、大売出しの抽選風景もクリスマスのムードを盛り上げます。一方、各家庭では早いところでは12月の初め頃からクリスマスツリーを飾り豆電球を点滅させています。
こちらの家の間取りはなぜか通りから見える側に居間があり、そこにセットされたツリーが外からよく見えます。
また、圧倒的に多いクリスチャンの家庭ではドアに“コロナ”(花輪)を飾ります。
こうしてスーパーでも家でもクリスマスを迎える態勢が整っていきます。

さて、そのクリスマスの過ごし方ですが、当然クリスチャンの伝統的なイブとクリスマスになります。
まず、クリスマスイブの夜10時ごろ教会に行きます。
長いミサやキリスト生誕の簡単な劇などで12時を教会で迎えた後、家に戻り、家族でパネトーンと七面鳥を食べ、熱いチョコレートに牛乳を加えた飲み物で団欒します。 そのときツリーの下に置かれたそれぞれの名前の書かれたプレゼントを受け取るのだそうです。
あとはそのときの状況で話がはずめば明け方まででもいっしょに過ごすということになると・・・。

<暑いときには熱いチョコレート>
なぜこの暑いときに熱いチョコレート?と思いますが、クリスマスは残念ながら北半球からやってきた習慣なので仕方がないですねというのがここの人たちの答えです。
そして熱いチョコレートはなぜか「イタリアから来たのではないか」と言います。
ここはスペインが宗主国なのにと思いますが・・・。

<変わりつつあるイブ>
この日家族がいっしょに時を過ごすことを大変重要視するため、24日の夜はレストランなども従業員の家族のため営業を休み街は静かになる…。
日本のように飲み歩いたり、恋人や友達と遊びに出かけるのとは対照的な街の風景だそうです。
ただ、最近はやはり飲み、遊ぶ傾向も出てきて、レストランなども営業するところがあるそうです。
また零細の自営業の商店では、仕事を終えた人たちがプレゼントを買うなど、かきいれどきでもあり、そうした店では以前から夜も営業するということです。
そして、上のような典型的なクリスチャンのイブの過ごし方もだんだん変わりつつあり、教会を早く済ませ、あるいはミサを省略して12時を家で迎える人たちも多くなったと聞きます。

<キリスト生誕を本当に祝うのは日本人?>
余談ですが、先日ペルー人(非日系人という意味の)も参加している“日本語おしゃべり会”の席でペルー人に「日本人は誕生日でもないのにクリスマスにバースデケーキを食べるんですね。」と笑われました。
そのときは「バースデーケーキというよりもクリスマスケーキとして食べている。
クリスマスは戦後になって一般化した風習で、物の乏しい時期、家族そろってケーキを食べる数少ない機会として定着してきたのだ。」とわかったようなそうでないような説明をしておいたのですが、いま考えると教会で簡単なキリスト生誕の劇をしただけで、家ではパネトーンを食べるペルー人より、キリストの誕生日をバースデーケーキで盛大に祝う日本人の方がよほど敬虔なクリスチャンではないか・・・。とこんど言い返しましょう。

<役者にも挑戦>
それから“簡単なキリスト生誕の寸劇”はこの間私自身はじめて“参加”しました。
先日、以前訪問した日系の幼稚園の卒業式に招かれました。
こちらの学年は暦年なので12月は学年末でもあります。
この日は卒園生だけでなく全学年の園児とその父兄が参加し、卒業式兼学芸会兼クリスマス祝賀会のようなものでした。
園児たちがかわいくて楽しく見ていると突然名前を呼ばれ、藁を持たされます。
他にも二人、キリストをかたどった人形と布をそれぞれ持たされて舞台に上がります。木を組んだ簡単な台の上に順番に藁を置き、その上にキリストを、さらにその上から布をかけて終わりという実に簡単なものです。
劇というより儀式といったほうがいいでしょう。
前もって説明を聞いていなかったので、何がなんだかわからないまま降りてきましたが、それでもさかんに拍手してくれるところをみると“こんなもんなんだ”とわかります。

以上がここのクリスマスに関して見たり聞いたりした情報です。
未確認情報もありますし誤情報もあるかもしれません。
異国の地でひとりさびしくクリスマスを過ごす私を不憫に思い、シニョ−ラ坂口が友人の家のクリスマスイブにさそってくださいました。
そこで新たに発見することもあるかもしれません。
訂正や追加は追ってあとの「ペルー通信」でさせていただきます。

ではみなさま、どうぞよいクリスマスを。




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